容量の小さい SSD へ Windows をクローンする際の注意点と、WinRE(Windows 回復環境)パーティションの再構築手順
※ HP などメーカーPCの工場出荷イメージは復元不可なことが多い(USB メディアで代替可能)
はじめに:メーカーPCの「工場出荷状態への初期化」について
HP を含む大手メーカー製 PC には、
工場出荷状態に戻すための専用の回復パーティション(メーカー独自のリカバリ領域)が配置されていることがあります。
しかし、
大容量 HDD → 容量の小さい SSD
へクローンする場合、このメーカー独自のパーティションは、どのセクタから読み込むかなど専門的な知識と対応が必要なため、簡単にクローンできないことが多いようです。
これは Clonezilla を使っても不可能 です(でした)。
ただし HP には公式サイトから
工場出荷状態に戻すためのブータブル USB を作成できるツール
が提供されており、メーカー独自イメージが必要な場合はそれで代替可能です。
よって本記事では、
- HP などのメーカー工場出荷イメージは USB で代替できる
- かわりにWindows 標準の回復機能(WinRE)は SSD 側に再構築する
という前提で進めます。
目的
A. メーカー依存ではない「Windows 標準の回復環境(WinRE)」の構築(本記事のメイン)
- トラブル時に USB を挿さなくても 自動修復が使える
- Windows Update の修復操作が簡単
- BitLocker を使う場合にも必須
B. HP などメーカー工場出荷状態の復元 → 必要なら公式ツールで USB を作成(本記事では扱わない)
前提条件(対象読者)
以下に該当する、中級者向けの内容です:
- Windows のクリーンインストール経験がある(無くても可)
- Clonezilla のような CUI ツールの使用を厭わない
- PC の蓋を開けて HDD/SSD 換装する作業に抵抗がない
- ブータブル USB や BIOS/UEFI を理解している
全体の流れ(概要)
- Clonezilla を使い、容量の大きい HDD → 容量の小さい SSD にクローン
- ※事前に HDD 側の OS パーティションを縮小しておく
- Windows が SSD から起動することを確認
- SSD 側の未使用領域から、WinRE 用の 1GB パーティションを新規作成
- Microsoft 公式 ISO から WinRE(winre.wim)を抽出
- Windows に WinRE の場所を登録
- 登録後、winre.wim は自動的に回復パーティションへ移動
- 回復環境が有効になっているか確認
手順詳細
1. HDD → SSD クローン(Clonezilla)
SSD のほうが数十 GB 小さい場合、
HDD 側の OS パーティションを事前に縮小する 必要があります。
Linux Mint のインストール USB などを使えば GParted が利用できます。
手順概要
- HDD を GParted で起動
- C ドライブ(通常は
sda3など)を SSD に収まるサイズまで縮小 - Clonezilla を起動し、HDD → SSD へクローン
- 途中で「消去されるのはどちらか」確認画面が出るため SSD 側が消える ことを確認する
- 間違えた場合は Clonezilla を再起動(再ブート不要のメニューあり)
2. SSD から Windows を起動し動作確認
起動後、
- Windows が正常に動作する
- HP の工場出荷パーティションが消えている(またはクローンされなかった)
ことを確認します。
これは正常です。
3. WinRE 用の回復パーティション(1024MB)を作成
Windows 標準の回復環境(WinRE)パーティションを作成します。
容量は 1024MB 程度を推奨
理由:
メーカー等では800MB程度確保されていることが多いが、過去に Windows の更新でパーティションの容量不足により更新が完了しなくなる現象に出会って原因特定と対応に苦労したことがあるため、余裕を持たせておく。
方法
- 「ディスクの管理」で C ドライブを 最大値 – 1024MB まで拡張
- 残り 1024MB の未割り当て領域を 回復パーティション(ID: DE94BBA4-06D1-4D40-A16A-BFD50179D6AC) に作成する
手順
WinRE用パーティションは GPT の場合は:
- タイプID:
DE94BBA4-06D1-4D40-A16A-BFD50179D6AC - 必須属性: 0x8000000000000001(hidden + required)
diskpart を起動
diskpart
対象ディスクを選択(通常は 0)
list disk
select disk 0
未割り当てから 1GB 作成
(例:1GB)
create partition primary size=1024
GPT partition type 設定(WinRE 用)
set id=DE94BBA4-06D1-4D40-A16A-BFD50179D6AC
属性を付与
gpt attributes=0x8000000000000001
4. winre.wim を Microsoft 公式 ISO から取得
Windows11 の ISO(Microsoft 公式)をダウンロードし、
エクスプローラーでダブルクリックしてマウントします。
ISO 内の sources\install.wim または install.esd に複数のエディションが入っているため、
例:
1= Home2= Pro
(ISO によって異なる)
抽出方法(7-Zip 推奨)
- ISO 内の
sources\install.wimを 7-Zip で開く - 対象エディションのフォルダ(例:
2)を開く Windows\System32\Recovery\winre.wimを取り出すC:\Windows\System32\Recovery\winre.wimとして配置
5. Windows に WinRE の場所を登録する
(※登録後、元の winre.wim は自動削除されます)
管理者 PowerShell または コマンドプロンプトで:
reagentc /setreimage /path C:\Windows\System32\Recovery
reagentc /enable
【重要】winre.wim は自動で回復パーティションへ移動される
実行後:
- WinRE イメージは SSD の回復パーティションへ移動
C:\Windows\System32\Recoveryに置いた winre.wim は 自動的に削除される
あなたの環境でも確認された通り、これは Windows の正しい仕様 です。
6. WinRE の有効化を確認
reagentc /info
以下が出れば成功:
Windows RE の状態: Enabled
Windows RE の場所: \\?\GLOBALROOT\device\harddisk0\partitionX\Recovery\WindowsRE
まとめ
- 容量の小さい SSD へクローンしても
Windows 標準の回復パーティション(WinRE)は後から再構築可能 - HP などメーカー独自の工場出荷状態への復元は
公式 USB 作成ツールで代替できるため問題なし - WinRE パーティションは 1GB(1024MB)確保しておくと将来の更新で困りにくい
- winre.wim は ISO から安全に取得でき、登録後は自然に回復パーティションへ移動される