映画鑑賞記「犬王」

こんにちは。くるーざーです。

今回は、最近見た映画「犬王」についてのお話。


「犬王」は実在の能楽師・犬王(道阿弥)の姿を描いた映画です。異形の姿を持って猿楽座(能を生業とする家)に生まれた犬王はある日盲目の琵琶法師・友魚と出会う。二人は意気投合し、エンターテイナーとして力を合わせ人々を熱狂させていく――。というのが大まかなストーリー。

個人的に趣味で親しんでいる能楽についての物語ということもあり、楽しみにしていた映画でした。以下感想。

良かった点

①演出

総じて演出がとても楽しかった印象があります。「犬王」では、犬王と友魚の舞台表現が幾度か描かれますが、その様子がバラエティに富んでいて面白い。実在した犬王がどのような演技をしていたか記録が残っていないこともあり、現代でいうところのプロジェクトマッピングを思わせる演出や、ロックバンドかのような音楽など、彼の演技は自由にいきいきとした姿で描写されており、その一つ一つがアニメーションとして説得力を持って展開されていきます。

他にも作中に出てくる亡霊の描写、冒頭に登場する呪いの仮面の描写など、優れた表現があふれていました。

②犬王・友魚のキャラクター

主要な登場人物である犬王・友魚。本作は彼らの物語であり、それで問題なく成立するほど二人のキャラクターは魅力的なものでした。

二人の出会いからともに舞台を作り上げていく様子、果ては二人の迎える結末など、その友情の描写は素晴らしいものだったと思います。

不満点

悪かった点、というよりは個人的な不満点として、「アニメーション表現の可能性を拡張し続ける湯浅監督が挑むのは、世界最古の舞台芸術《能楽》」(公式サイトより)とまで銘打っておきながら、いわゆる「能楽」は作中でどちらかといえば悪役の側に置かれていたことが挙げられます。

前述の通り、犬王の演技も古典的な能楽からはかけ離れたものでしたし、「能楽」を期待していた身としては肩透かし感がありました。


多少不満点もありましたが、総体としてはとても良い映画だったと思います。おすすめです。ぜひぜひ観にいってみてくださいね。